

だいたいが後回し、@SHARP_JPです。かけられて肝が冷える言葉はいくつか思い当たるけど、社会人なら「あれどうなった?」はなかなかの肝冷えだろう。これは私だけではないと信じて言うが「君、あれどうなった?」と聞かれた時はたいていどうもなってないし、というかどうもしていない。つまりなにも手をつけていない。
私にとって「あれどうなった?」は唐突に締め切りを宣告されるのと同義であり、心の内ではいまから全部やる算段を高速で立てなければいけない。同時にそもそもなにもやってないことを悟られずに、どうにか「君、あれどうなった?」へうまく返事し、この場を切り抜けなければいけない。その綱渡りに肝が冷える瞬間である。
私の返事はほぼ毎回、まず「あれ、と申しますと?」と大量のタスクを抱えたポーズを見せたのち、「あーあのことか」と勝手に得心した表情へ変貌し、声量と滑舌を急速に落としながら「ちょうどいま考えを整理しているところです」とかなんとか言って、ゴニョゴニョと逃亡を図る。必要ならば、来てない通知によってスマホに気を取られるふりさえする。われながら器の小さい対処だと思う。
ただ私にとってはこの一連のアクションも、あながちウソをついているというわけではない。大量のタスクを抱えているのは事実なのだ。私は仕事上、常にすばやくツイートできる態勢でいなければならぬし、かかってきた電話を取るようにリプライに返信しなければならぬ。
それに加えて、物事の優先順位が致命的につけられない私は、あれどうなったのあれに並列して、炊事洗濯から家のトイレットペーパーの補充、買う予定のスニーカーの色、読むべき本や聞くべき音楽が to doリストに並ぶのだ。それらをおもしろいと感じる順に手をつけようとするので、私という人間はまったくもって始末に負えない。いささか特殊な職業病と言えるかもしれないが、社会人として大いに欠陥を抱えていることは実感している。だから会社にいる時の「あれどうなった」に、心の底から肝が冷えるのだ。
1Pマンガ(まるいがんも 著)
ここにも「あれどうなった?」に対処する人がいた。私とは逆のムーブで乗り切ろうとする男の話だ。たしかに巧妙な言葉の選び方や省略でもって「あれどうなった?」に元気よく応じるのは、うまいやり方だと思う。後ろめたさを抱えた私にはできそうもないけど。
ほんとうは「あれどうなった?」のあれを忘れるなんてめったにないのだ。ただあれはあれのまま、頭の中に存在し続ける。あれをあれでなくすには、段取りを組んで着手し、余裕をもって進める。そんなことはわかっている。だがわれわれの暮らしには「あれ」なんてぶっきらぼうに呼ばれる物事より、ずっと楽しくてやりがいにあふれることや、もっと切実に自分や誰かのためになるタスクに満ちているのだ。あれなんて雑に呼ぶからあれはあれなのだ。
いつかそう逆ギレしてみたいのだ。

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