

この連載では、『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』などの編集者であるコルク代表・佐渡島庸平が、『コミチ』に投稿しているマンガ家の中から気になる存在を毎回紹介します。
感情を描く意識
今回は、あい茶さんを紹介。
まずは、あい茶さんの作品を見てほしい。
あい茶さんは、どの作品でも感情を描くのが格別にうまい。この作品では、お父さんの思いや経験を通して変わっていく女の子の感情の変化が、みずみずしく伝わってくる。
どんな表情をどんなカットで描けば読者により伝わるのか、この選定があい茶さんは本当にいい。
マンガにおいて大事なことは、読んでくれた人の心を動かすことだ。
そのためには、感情を描かなくてはならない。感情を描くためには、登場人物の感情がわかりやすく現れている絵を描くことが大事だ。当たり前のことに思えるが、これができておらず、マンガでなくただの絵になってしまうことがある。
あい茶さんの作品からは、感情を描く意思が伝わってくる。そして、その感情をしっかり読者に伝えることができている。だから、SNSでも反響を得て、バズっているのだと思う。
そういった作家を、僕はすごくいいなと思うし、彼女の作品をもっと読みたいなと思っている。
読者にストレスを与えない情報の渡し方
マンガを描いていく作業は、料理の盛り付けに似ている。
料理の盛り付けは、ひと皿の限られたスペースの中で、様々な食材をきれいに美味しく見えるように並べることが大事だ。見るからに大盛りになっていると、それだけで少し食欲は削がれてしまう。また、少なすぎてもげんなりしてしまう。
マンガも同じだ。限られたページ、コマの中で多くの情報をわかりやすく入れながらも、読者にストレスを与えないことが重要だ。SNSでは、視界に入った数秒で読まれるか読まれないかが決まってしまう。読み始めてもストレスを感じると、読者は読むのをやめてしまう。
あい茶さんは、しっかり感情を描いた上で、コマを増やすことなく情報を詰めている。登場人物たちのいる場所や彼らの関係性、気持ちなどの情報を、背景や効果の工夫によって描いているのだ。
また、この情報量が、絶妙な加減でまとめられているのもすごくいい。これは、あい茶さんにビジネスマンとして経験があったことも大きいと思う。物事を、どのようにまとめてどのように伝えれば人に伝わるのか、そのツボをしっかりと押さえている。
みんなもあい茶さんの作品を読んで、ぜひ感情の描き方や表現の工夫を発見し、学んでみてほしい。
▼あい茶さんのマンガはコチラ
https://comici.jp/users/atogofun
<編集協力:平井 海太郎>

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