180786 654 654 false eZS7rKuX9VtTkQv11Fs6V7taJIkv2nnK e242e277cdfb77d18807e4114c8dcd87 0 0 7
シャープさんさんの作品:刺々しさとかわいさ

あけました。おめでとうは省略します。 @SHARP_JP です。本年もなにかとよろしくお願いします。どうか今年の終わりには、すべての人がひとり残らず、「平均したら悪くなかったな」と感慨できる年になりますように。そう願わざるをえない。すがるように思う年明けだった。

 

固唾を呑むとはまた異なる、じっと息を詰めるような、まんじりともしない時間が現在進行形で続いている。いてもたってもいられない焦燥感と、座っても横になっても立ち尽くすような無力感を同時に抱えている。その引き裂かれるような心境を持て余したり、すり替えようとして、人の使う言葉が刺々しくなる様を私は見ていた。

 

悲しい出来事を前にして、人々の言動が刺々しくなることを非難したいわけではない。あまりの理不尽に、だれかのせいにしたいという、他責の気持ちは私にもある。なにもできない状況にあって、せめてばかりの「正しさ」を社会にふりまこうとする意識もわかる。どちらの行為も背景にあるのはおそらく、その人なりの善意の発露なのだと思う。

 

でも私はやっぱり、疲れてしまった。刺々した言葉を目にし続けるのがしんどくなってしまった。だからわずかながらの募金をして、あとは目を伏せてしまった。仕事においても、発すべきことをすみやかなタイミングで発し、できることを淡々と行うのみという、平熱の正しさに徹しようとした。それが正しいのかは、まだわからない。

 

カワウソ本部長(izuu 著)

 

刺々しさに疲弊した私は、視覚をかわいいもので埋めようとした。それはただの逃避でしかないとわかってはいるが、平熱を維持するためにバランスが必要だったのだろう。ふわふわしてたり、コロコロしてたり、にこにこしたものをひたすら目に映そうとする時間があった。

 

幸いなことに、私たちの周りにはかわいいものがたくさんある。ネットは悲惨な映像や言葉であふれているけど、同じくらいかわいいものにもあふれていて、世界自身が刺々しさへ転ばないように、慎重にバランスを取ろうとしているようにも思えてくる。たぶんこのマンガもいま、そういうバランスに貢献しているのかもしれない。カワウソはかわいい。

 

それを癒しと言うと陳腐になってしまうが、かわいいものはたしかに、われわれに回復をもたらす。なにをかわいいと感じるかは人によって違いはあるにしても、白くて小さいとか、弱々しくてやわらかそうとか、頭が大きくて目と目の距離が離れているとか、根源的なかわいさはささくれ立った世界を少し落ち着かせるはずだ。

 

ふだんはそのかわいさにあざとさや計算を見出すこともあるのに、いまの私には周囲に氾濫するかわいいが明確な救いになっている。かわいいを切実に必要とする状況はかわいくないけど、私はそれを必要としている。たぶんあなたに足りないのも、かわいいの摂取かもしれない。

面白かったら応援!

作品が気に入ったら
もっと作品を描いてもらえるよう作者を応援しよう!