52065 654 654 false GsIHHNNYTwhaxfxpVPAaxMvM7jLd00RK f456c2206afc94e2e50fdb109665d885 怪談需要 0 0 7 false
シャープさんさんの作品:怪談需要

こわごわしがち、@SHARP_JP です。夏を迎えようとするこの時期、怪談の需要が立ち上がる気がする。お化け屋敷がオープンするのも夏休み前の今頃だろうし、怪談系のYouTubeも急に再生回数が増えたりするのだろうか。


私もいい歳した大人なので、テーブルを囲む皆をひやっとさせるような心霊的エピソードのひとつやふたつ持っておきたいと思うのだが、あいにくそうもいかない。そういう目にあったことがないのだから喜ばしいことなのだけど、さらっと周囲の背筋を冷やす話を披露する人を見るとうらやましくなる。


もちろん私だって「なんか感じる」ことがないわけではない。出張で恐ろしく古いホテルを宿に取ってしまって、ジャラジャラいう鍵で部屋の扉を開けた時など、さすがにそういう感覚になる時がある。だがそれも最初だけで、ゴロゴロしてビールなんか飲んでしまえば、まあいいかとぐうぐう寝るのがオチだ。稲川淳二で言うと、私の怪談は「イヤだな〜イヤだな〜」のあとが続かないのである。


ただ一度だけ、いまから思えば「あれは金縛りというものだったのかな」という経験がある。どこか地方のホテルだった。丑三つ時、急に目が覚めた身体はいっさい動かせなくて、ひどい耳鳴りと轟々いう血流の音をしばらく聞いていたのを覚えている。無響室だと自分の身体内部の音が聞こえるというのはこんな感じだろうかと考えているうちに、身体のこわばりが解放され、また寝てしまった。


大方の予想通り、私の怪談話はここで終わりだ。申し訳ない。


怖くない怪談 第1話:30時00分(田淵有希也 著) 


この作者も怪談ニーズに応えることのできない、怖くない怪談を披露している。妙にディティールの細かい描写はされるものの、いちいちがおかしい。時計は30時00分を指しているし、カレンダーは3年前になっている。


かろうじて怪談話ではあるものの、金縛りは3年前に3000円貸した友人の「返して欲しい」という怨念だったわけで、友人は生きてるし、お金もあっさり返される。なんの問題もないし、ここでも「イヤだな〜イヤだな〜」のあとは続かない。平和だ。


それにしても借りた金が3000円というのは、時間が経つとわざわざ返せと言い出せない絶妙な金額だと思う。私にも身に覚えがある。そういう3000円の怨念をこれまで何度積み立ててきたかと振り返ると、思わず背筋が冷えそうになるけど、直後にまあいいかという気になる私は、やはり怪談に向いていないのだろう。 

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2021/7/15 コミチ オリジナル
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