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シャープさんさんの作品:センサー音痴

なにかと鈍い、 @SHARP_JP です。私には「自分は運動神経が鈍い」という自己認識が、身体の隅々にまで行き届いている。運動音痴が板についていると言ってよい。運動音痴という認識が板につくと、それ自体を恥じる感覚も磨耗してくるようで、大人になった今、情けないと感じることはあっても、コンプレックスと思いつめるようなことはなくなってしまった。

 

若い頃は学校でも遊びでも「運動ができない事実を白日のもとにさらす」機会があふれていたけれど、大人になればそういう場所に近づかなければいいだけの話だ。さらには、音痴はなにも運動だけではない。音痴はもっと多様に、己の中に潜んでいる事実が、大人になるにつれてわかってくる。自分は歌も服装も恋愛も処世も音痴だと続々発覚していき、もはや運動の音痴だけに構っていられなくなるのだ。生きる音痴に比べれば、運動音痴なんてかわいいものである。

 

ただし運動音痴とはスポーツの不得意さだけを指すのではない。運動が身体の動きそのものを言うのであれば、運動音痴とは身体のコントロールや空間認識の下手さまでを広く含むのであろう。そう考えると、私は私が運動音痴である事実を突きつけられる場面は、日常にたくさんある。

 

たとえばお店に入る時の、あの検温装置だ。そもそもスムーズに顔パスできたためしがない。私の顔面の表面温度を測るため、画面にある証明写真のような枠に正しく入れ、と必ず注意される。承知はしたものの、私は空間認識の能力が著しく低いため、どう補正したらいいのかとっさにわからないのだ。

 

左右が反転した、虚ろな目をしたマスク姿の自分をモニターに眺めつつ、顔を動かす。どっちがどっちかがわからない私は、枠に収まろうとどっちもこっちも試そうとし、モニターの中の私は近づけば遠ざかり、あっちに行けばこっちに動く。そのいつまでたっても入店できない時間が、己の運動音痴をつきつけてきて、私はすっかり買い物の意欲を失ってしまうのだ。

 

サンタも(ミキメミ 著)

 

もはや3回目のコロナクリスマスである。サンタもトナカイも慣れた所作でマスクをするのだろう。クリスマスプレゼントも非接触で置き配だ。このマンガを読んでも、クスッと笑うより前に「そりゃそうだよな」と感じる私が怖くもある。

 

願わくばサンタは私のように検温装置にいちいちひっかかるような、運動音痴でありませんように。あんなものに一軒一軒引っかかっていたら、プレゼントの配達なんてとうてい終わるはずがない。この日の夜のサンタだけは世界中で顔パスできるように、サンタの恩恵を受けるわれわれが装置のプログラムくらいなんとかすべきではないのか。あの装置にいちいち手こずる私は、強くそう思うのだ。

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2022/12/8 コミチ オリジナル
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