47249 654 654 false MXWSGuiyyd25BMFcJYg9JNVEuidJmns3 9eb3ec8b7372b5029d401262a1ecac92 推したい気持ち 0 0 7 false
シャープさんさんの作品:推したい気持ち

推すのが仕事、@SHARP_JPです。先日、両者ともに国民的スターと呼べるおふたりの結婚報告が世間を駆け巡った。両者ともに「現代的な結婚を考える」国民的ドラマで夫婦を演じられたおふたりなので、フィクションと現実の境界があいまいになるような不思議な感覚が、そのニュースの驚きをさらに加速させたように思う。私も一瞬混乱した。


国民的スターの結婚が世間を駆け巡った跡には、国民の喪失感が随所に立ち昇るのが常である。「おれの嫁が」「わたしの彼氏が」といった表記がネットにあふれ、ショックで仕事を早退したり、明日は会社を休むことを早々に宣言する人が現れる。叶わぬ夢は叶わないのだと知った日のほろ苦い悲しみだ。


だが私はさいきん、スターの結婚から生じる世間の反応に異変を感じている。好きなのに祝福の声が大きいのだ。悔しいとか悲しいという感情をみじんとも感じさせず、手放しで祝福する。好きなのに。この異変には「推し」という概念あるいは行為が、大いに関係しているのではないか。


かつてわれわれは、だれかやなにかを熱烈に好む人のことを「ファン」と称して一元的に語ってきた。そして同時にファンと指差す人のことを、利己的な人間像として、その行動を解釈していた。つまりファンとは「好きな対象を自分の所有にしたいと欲望する人間である」と考えていたのではないか。


それがどうだろう。だれかやなにかを好きという気持ちや行為は、もっと多様なものだと明らかになってきた。好きだからこそ、その存在を自分の拠り所とし、その存在を応援しようとする人がいる。自分だけの所有にすることなく、その人の幸せやモノの発展を願う、利他的な人がいる。それを教えてくれたのが、推す人たちだろう。


だからこの度のニュースに、祝福の声があふれた。たぶんもう、好きをファンとひとくくりにできない時代なのだろう。好きからはじまる行為や思いは、もっと尊くて奥深いものなのだ。


最推しの結婚を思いがけない展開で乗り切った話(天野有海 著) 


推す人の推す気持ちの奥深さが、このマンガでていねいに語られている。話のオチめいて語られる、喪失からの回復はなかなかに現実的だけど、それも含めてだれかやなにかを好きになる人の人間らしさを含んでいてとてもいい。いまいち推す人や推す気持ちがわからないという人は、ためしに読んでみるのをおすすめする。


だれだって、好きな顔や好きな人柄がある。それが完璧なかたちで画面の向こうに提示されれば、熱烈に好きな気持ちが湧き上がることだろう。しかしその先にも好きの分岐はあるのだ。推しが生み出してきた表現に救われる経験。推しが全力を傾けた仕事に感銘を受ける経験。推しがパーソナルに発する率直な声に共感を寄せる経験。多様化するメディアや手段は、推しである人のさまざまな姿に触れることを可能にした。だからいつしか、その人の存在そのものを応援するという行為が生まれるのだろう。


それはそうと、星野源さん。私は、昔の自分の屈託や葛藤を抱えながらも、なお巨大な世間と新しい表現に立ち向かわれる星野さんが好きです。こんなところで推しの気持ちを表明するのもどうかと思いますが、これからもささかやながら応援しています。あらためまして。ご結婚おめでとうございます。 

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