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シャープさんさんの作品:間が悪い

小声です、 @SHARP_JP です。なにかにつけて間が悪い、という人がいる。まず、向かった店がいつも定休日とか、当人の横で名指しの陰口を叩いてしまったとか、「ちょっと気をつければいいものを」と言いたくはなるものの、おおむね本人の「運のなさ」として片付けられる、間の悪さというものがあると思う。

 

一方で、「ちょっといいですか」と声をかけようとしたらその人の電話がなったり、ZOOM越しの発言がいつもだれかの発話と重なってしまったりする、あるいは注文した定食に味噌汁がなかったり、すれ違う道でお互い同じ方向にスライド移動してしまうような、本人にはとりたてて落ち度がない、しかしなぜかいつもタイミングや隙を逸してしまうような、間の悪さもある。

 

私はどちらかというと、後者の間が悪い人間だ。店員さんを一度で呼べた試しがないし、追加の注文がいつまでたってもできない。呼ぼうと決めた店員さんはだいたい「すみませーん」とまっすぐ発せられただれかに横取りされる。言おうと決めた会議の意見は決まって私の前に順番が回った人と被る。そして、だれに向けていいかわからない苦笑いが、いつも私の顔にふわふわと漂うのだ。

 

私はなにかにつけてタイミングを逸する。それが自身にとって致命的なミスでないにしろ、自らの間の悪さは自らの次の行動にじわじわと緊張を与えるから、さらに間の悪さを誘発するのだろう。たぶんそれが、なんか間が悪い人だなという周囲の印象を決定づけるのではないか。なんとも間の悪い話である。

 

捕まらないナース(梅元とうふ 著)

 

私の間の悪さなど、苦笑を顔に貼り付けていれば済むけれど、そうもいかない人もいる。申し送り事項が多い、看護師さんのような仕事は、間の悪さを笑って済ますことができない人たちだろう。お互いが激務の間を縫うようにして必要な伝達を行うのだから、聞くべきタイミングを逸する切実さはこのマンガを読むと想像できる。間の悪い看護師さんは大変だ。

 

ただし、間が悪い人はやさしい人だと思う。これは自己弁護も多分にあるけど、間が悪い人は必ず、行動の前に逡巡があるのだ。自分の行動が相手の邪魔にならないかどうか考えるあまり、間が悪い人は行動のタイミングを逸してしまう。思いやりがアクションをワンテンポ遅らせるなら、そのおずおずとした「ちょっといいですか」をすぐに間が悪いと断ずるべきではない。

 

そう思って、時に尿意を我慢しながら、時に書きかけのツイートを中断しながら、私はじっと話を聞いている。

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