私はロボットではありません、 @SHARP_JP です。さいきんすっかり人混みが苦手になった。以前はどちらかというと人混みを目にするとワクワクしていたのに、人間はほんとうに身勝手なものだ。理由は自明である。コロナ中にガラガラを体験し、自分の周囲にスペースがあることの安心感を知ってしまったからだろう。
いまやガラガラの方が珍しくなった。いたるところに人混みがある。通勤電車はしれっと地獄に戻ったし、出張で飛び乗った新幹線の混雑ぶりに狼狽えることもたびたびだ。ガラガラに慣れた身体には、ギュウギュウが以前にも増して堪える。季節の変わり目の気温に身体が追いつかないように、人混みに対しての皮膚感覚がバグったままで、私はいつも緊張しながら外を歩く。
しかし最近のギュウギュウは、以前のギュウギュウとは少し様相が異なる。私が大阪や京都の近辺を生活範囲にするせいかもしれないけど、人混みを構成する人たちが圧倒的に旅行中の人になった。ギュウギュウする場所で、外国語しか耳に入ってこないことも見慣れた風景になりつつある。
もちろんモノを売る仕事に関わる私は、ガラガラよりギュウギュウの方がいいことを知っている。モノが売れるには、モノを買う人の何倍も何倍も多くの人が、そこを訪れないといけないのだ。だから原則的に人混みがあることは喜ばしいことだと思う。ガラガラからギュウギュウへの街の変化に、私ははやく慣れないといけない。
慣れた後に私がしなければいけないこともわかっている。新しくてガラガラなのに人知れずおもしろい場所を私は私のために探さなければいけないし、不当にガラガラのままいつまでもギュウギュウにならないところに陽の目を当てるのは私の仕事のひとつだ。さらに言えば私は、もともとずっとガラガラで、しかしガラガラのまま新しいモノゴトや表現が生まれる場所をむかしから好んできた。そういう場所を、さらに愛していかなければならないと思っている。
混雑状況調査(ヒバライ バイト 著)
繰り返しになるけど、ギュウギュウはいいことだとわかっているが人混みは苦手になってしまった。ギュウギュウは繁盛の証だし、だからこそ数年前までガラガラに忍耐と工夫で立ち向かったお店の方たちを心底尊敬する。しかしどうにも、ギュウギュウで並んで入らなければいけないお店に、私は二の足を踏むようになった。皮肉にもコロナによって、適度な距離が確保された空間のよさを知ったせいで。
だからこのマンガのように、お店の混雑状況を私に代わって見てきてくれる人を、一瞬ありがたいなと感じてしまった。荒唐無稽なバイトを描くマンガに私は不覚にも、笑う前に現実的な感想を抱いてしまったのだ。いまの私なら、毎回オーダーするたびに、混雑状況調査バイトへ数千円を払ってしまうかもしれない。
とはいえ私が好んでいくお店は、むかしもいまも適度にガラガラなことが多いから、そこはなんとか変わらずにいてほしいと、またしても身勝手なことを思っている。ギュウギュウな人混みをかきわけて、空いたお店に向かうこともまた、ぜいたくなことになったのかもしれない。
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