この連載では、『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』などの編集者であるコルク代表・佐渡島庸平が、『コミチ』に投稿しているマンガ家の中から気になる存在を毎回紹介します。
完全に狂っていたら共感できない
今回は、静かなエロ狂気、猫田まんじまるさんを紹介。
猫田さんはすこし狂った不思議なマンガ家だ。まずは猫田さんがLINEスタンプを創作する過程を描いたマンガを見て欲しい。
このマンガはエロいだろうか。猫田さんの作品は、「これはエロのつもりじゃない」と言われてしまえば、納得してしまいそうな絶妙な感じがある。僕はそこにすごく笑ってしまう。
人は本当に狂っているものを目の当たりにした時、瞬間的に馬鹿らしくて笑ってしまうことがある。しかし、それは反応のようなもので、共感することはない。
猫田さんは、何かがちょっとだけ狂っている。そのちょっとだけ狂ったズレ具合に僕は思わずニヤッとしてしまう。そこに彼女の作品の面白みがある。
エロだけではない人間性の深み
エロ漫画というジャンルに人は食いつきやすい。
エロやグロといった社会的にタブーとされている要素は、昔から人を引きつけてやまない。だから、エロはそれだけで一定の注目を集めることができる。しかし、ただのエロ漫画では、物語としては読まれず、エロいだけのものとして消費され、終わってしまう。
この作品をみて欲しい。
先ほどの作品とは打って変わって、このダリの伝記マンガは人間性の深みを考えさせられる読み応えがないだろうか。他にも猫田さんは谷崎潤一郎の『刺青』の一部分をマンガにした作品も描いている。
こういった作品を読むと、彼女自身の本来的な趣味はどこにあるのだろうかと、僕は興味をひかれる。人間性の深みを描ける人がエロ漫画を描いたとき、単にエロいだけの読み味には決してならない。僕はそこが彼女の魅力だと思う。
猫田さんが今後、エロと少しの狂気を併せ持つ彼女の人間性が爆発する作品を生むことに期待している。
▼猫田まんじまるさんのマンガはコチラ
<編集協力:平井 海太郎>
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