


この連載では、『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』などの編集者であるコルク代表・佐渡島庸平が、『コミチ』に投稿しているマンガ家の中から気になる存在を毎回紹介します。
そもそもの魅力を伝える
今回は、パン×哲学×マンガで1/100万の作品を期待する、さく兵衛さんを紹介。
まずはさく兵衛さんの作品『哲学がわけわかめだった私がなんとなく哲学を理解した話 』を見て欲しい。
哲学と聞くと多くの人が身構えてしまう。哲学は多くの人が興味を持っているが、なかなか手を伸ばせないジャンルだ。哲学をこれから学ぼうとしている人に、カントの純粋理性批判の話から始めてもいやがられるだろう。何かを学ぼうとしている時には、そもそもから伝えることが重要だ。
例えば、株の運用方法の面白さを伝えるマンガを描きたい時、いきなり株の話から始めると読者がついてこれない。そもそもお金とは何かを伝えることが必要だ。これは、僕が『インベスター Z』 の連載を始める時に作者の三田紀房さんに言われた言葉だ。
さく兵衛さんの作品は、少し変わった先生を魅力的に描くことで、哲学のそもそもの面白さをうまく伝えている。
まず100人に1人の存在を目指す
1万人に1人の特別な存在をいきなり目指すことは難しい。まず目指して欲しいのは、一つのジャンルで100人に1人の存在になることだ。それができたらまた違うジャンルで100人に1人の存在を目指す。このかけ合わせで、1万に1人の存在になることができる。
多くの人が自分のことは語るに値すると思わない。しかし、自分が置かれている状況が全人口の何%かを考えてみて欲しい。パン屋さんでパンを作る仕事をしている人はどれだけいるだろうか。
マンガ家はまずマンガを描けることで100人に1人の存在になっている。
さく兵衛さんの場合は、自身のパン屋での経験を深掘りし、かけ合わせることで1万に1人の存在になっている。
今までは、漫画の世界で勝とうと考えると漫画家として、1/1000にならなくてはいけなかった。しかし、SNS時代では、漫画家としての1/100と自分の経験の1/100で勝つことができる。 僕はこれからさく兵衛さんが、たとえば、パンの作り方を哲学するような1/100万の作品を生み出していくことをすごく楽しみにしている。
▼さく兵衛さんのマンガはコチラ
https://comici.jp/users/sakubetaro
<編集協力:平井 海太郎>
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