

この連載では、『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』などの編集者であるコルク代表・佐渡島庸平が、『コミチ』に投稿しているマンガ家の中から気になる存在を毎回紹介します。
本当の関心はキャラのリアクション
今回は、予測不能のキャラを立てる、ネコまんさんを紹介。
まずはネコまんさんの作品『アルトラマン』を見て欲しい。
いかがだろうか。続きが気になる展開に心躍らないだろうか。
サスペンスは、物語に謎を仕込むことで、読者の心を宙吊りにし、作品離れを起こしにくくする。『アルトラマン』にも様々な謎がある。なぜ彼女に超能力が備わったのか、冒頭の傷だらけの人に何が起きたのか、これらの謎が強く読者の心を惹きつけている。
しかし、『アルトラマン』を本当に面白くしているのは、サスペンスの要素ではない。主人公の女の子だ。
物語において、人が強く関心を抱くのは、次に何が起きるかではなく、起きたことに登場人物がどうリアクションするか、だからだ。
例えば、大河ドラマは、起きる出来事は全て知られた上で、多くの人に楽しまれている。それは、教科書と違い、歴史の事件に際してキャラクターが何を感じて、どう行動したかといったリアクションが描かれているからだ。
予想のつかないキャラを立たせる
『アルトラマン』の設定はシンプルだ。超能力によって、人の声が聞こえ、心で思ったことが現実に起きてしまう。しかし、この女主人公のキャラ設定はややわかりにくい。彼女がどんな性格のどんなキャラであるかを一言で人に伝えるのは難しい。
一般的に、キャラクターは分かりやすさが重要だ。その方がキャラが立ちやすくなるからだ。ネコまんさんのすごいところは、この複雑なキャラクターをしっかりキャラ立ちさせていることだ。冒頭の彼氏への態度だけでも、この子はどんな子なんだろうと読者の興味を惹きつける。何かが起きたときにどんなリアクションを起こすのか全く予想が立てられない。だから、僕はついつい彼女のことが気になって読み進めてしまう。
僕はこれからの『アルトラマン』の展開が一読者としてすごく楽しみだ。加えて、ネコまんさんがこれからどんな魅力的なキャラクター、作品を生み出していくのかすごく期待している。
▼ネコまんさんのマンガはコチラ
https://comici.jp/users/nekomandala
<編集協力:平井 海太郎>

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